• 歳時記

絵と布の画廊歳時記 2014年9月10月合併号

縞の帯低めに結び秋澄む日 橋本ハルヱ
箱根秋暉−2

児島善三郎「箱根秋暉」60.5×72.5cm

 

1941年 加筆完成1955年

湖上夕照046

志村ふくみ「湖上夕照」1979年

滋賀県立近代「志村ふくみ」展

カタログより転載

 

山も湖も秋色に澄み渡る艶やかさで、まさに秋暉と呼ぶにふさわしい情景です。

これはもう風景画というより、歌で表されているように錦と呼ぶ方がずっ と合っているようにも思えます。

11月3日より展覧会をさせて頂く志村ふくみさんの作品「湖上夕照」(作品集より)を

橋本ハルヱの句と一緒に掲載させて頂 きます。

 

レゾネで調べて見ると箱根が画題で出て来るのは1937年(昭和12年)が最初です。

電車と登山鉄道で気軽に出かけられ、近いわりに雄大な風景が 楽しめ、乙女峠や箱根峠からは冨士の勇姿も拝む事が出来ます。

箱根を描いた中で一番有名なのは元箱根の対岸から恩賜公園の半島ごしにとらえた二子山を描い た

50号と100号の「箱根」二点です。

本人も自作解題の中で述べていますが双子山を実際より相当誇張して大きく描き、

「山嗤う」と言ったようなスケール の大きさを表現しようと思ったようです。

又、逆方向の元箱根から対岸を見て湖水面を多く取り入れた構図も数多く描いています。

よほど気に入っていたので しょう、ほぼ毎年、それも四季折々に写生旅行に出かけています。

最晩年に至っても熱海や伊豆山の往きかえりに訪れていました。

この絵も取材から14年も 経ってから冷気を含んだ空や湖面に手を入れて完成させたものです。

 

 

 

兒嶋画廊所蔵「志村ふくみコレクション展」のお知らせ

 

叔父の経営する日本橋画廊から独立してから2年後、

渋谷区神宮前に画廊を開いてから間もなく志村先生の額装小裂の展覧会をさせて頂きました。

その きっかけは、今も手元に大事にしていますが、

南画廊の志水さんが額装の岡村ビヨンさんに依頼したベニヤとガラスで出来た小さな、

クレーの水彩画のような緑 と淡黄色の渋い諧調の志村先生の額装小裂を手に入れたことからです。

その時には、すでに少し光に焼けて変化が出ていましたが、

その美しさは例えようの無い もので、すっかり魅せられてしまいました。

 

 

それ以降、先生のお優しさに甘え乍ら幾度も展覧会を開催させて頂いて参りました。

身の程知らずで叱られた事もあ りましたが、

この度は、先生が東洋のノーベル賞とも言われる京都賞を受賞された事を祝し、

慎んで画廊コレクションとして展示させて頂く次第です。

着物仕立 ての作品13点の他、額装小裂や実験的な展示方も交え約25点を展示致します。

画廊のスペースや会期の長さを考慮して期間中一部展示替えを行います。ご高 覧の程お願い申し上げます。

 

志村シミヅ。psd

志村ふくみ初期額装小裂 1960年頃

南画廊制作

 

 

 

兒嶋画廊所蔵

志村ふくみコレクション 光彩陸離

志村ふくみ_紅芙_色補正 濃  志村ふくみ_麗宮_色補正
紅芙蓉 1985年頃             麗宮 1970年頃

志村ふくみ_杜若_色補正  志村ふくみ_藍熨斗目_色補正
杜若 年代不詳              藍熨斗目 1975年

 

兒嶋画廊は1980年から過去7回にわたり志村ふくみ展を開催して参りました。

この度、志村先生は京都賞を受賞され、国の重要無形文化財認定(人間国宝) に加え、

その業績は真に世界の認めるところとなって参りました。

パリの日本文化会館に於いても今秋展覧会が予定されています。

当画廊所蔵の志村ふくみコレ クション

(1961年作「律」から始まり1975年作「藍熨斗目」、1979年「花絣」などの代表作を網羅)を通して

先生の歩んで来られた色彩と詩情の織 りなす光彩陸離たる世界をご高覧頂ければ幸いです。
会場 丘の上APT

会期 11月3日〜12月14日

12時〜18時 月曜休 ※祝祭日営業

 

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