• 歳時記

絵と布の画廊歳時記2015年3月4月合併号

吾も春の野に下り立てば紫に   星野立子

 

 

1951.国分寺風景春hp

児島善三郎「国分寺風景」45.5 x 52.7cm 1951年頃

 

 

紫とは違いますがピンク色の空、部分には紫の畠や家の屋根が見える。柳の新芽のようなのが手前にひょろひょろはえている。

同じ場所を何枚も沢山描いています、算盤玉のように見える二階建ての家がおなじみ。

でも、いつもと目線の高さが違う。国分寺の南口を下った辺りから見た本村の風景。

中景のネクタイ生地のようなストライプは残りの丘の土留めらしい。

 

残りの丘というのは昔、野川を塞き止めて貯水池のようなものを作って府中へ水を送ろうとして、失敗して流された堰の後らしい。

櫻が終わった、ちょうど今の季節と同じ頃の風景でしょう。

ぬくぬくと春の暖かさが伝わってきます。

野川は手前の家のすぐ先を左に向かって流れています。

春の小川は見えません。

国分寺には今も所々に里山や雑木林が残っています。

掲載の写真は本年撮影、国分寺のロマンチック街道。

 

satoyama-5        satoyama -3

 

掲載の句を詠んだ星野立子は高浜虚子の次女で1903年生まれ。虚子は自分から俳句を勧めたのは立子だけという。

 

『自然の姿をやはらかい心持ちで受け取ったままに諷詠するという事は立子の句に接してはじめて之ある哉という感じがした』

『写生といふ道をたどって来た私はさらに写生の道を立子の句から教わったと感じる』

『明るい鏡に写し取ったような景色を写生した句』

『作者の感情に動くままに景色を描くといった句になって来た』等と我が子への言とはおもえぬほどに書いています。

他に、春の句を探すと、その雰囲気が解るように感じます。

 

風に揺るるげんげの花の畦づたひ

 

萩の芽にふるればしなうやわらかに

 

ちなみに、冒頭の句の吾は「あ」と読むそうです、念のため。

昭和初めの頃の女子の意気如何に高しやと思うと同時に、自然との共生感を眩しく感じます。

 

 

新着コーナー

 

清水登之chousei

清水登之 マドリッド郊外 1925年 6号

 

清水登之は最初アメリカに渡りのちにパリに行った変わり種です。

ニューヨークやパリの町や人物を描いた風俗画が有名。

帰国後は独立美術協会に所属し日本の農民の風俗等を描きました。

 

 

安井水彩湯河原

安井曾太郎 湯河原風景 水彩

 

言わずと知れた巨匠です。終世、セザニアンでした。

この水彩は湯河原風景でも写実的に描かれています。

珍しく自筆サインが鉛筆で入っています。

 

 

台湾紀行

 

三月末に、半年ぶりくらいに台湾へ行ってきました。いつもと同じ二泊三日。

今度は二年後に迎える、私ども日本洋画商協同組合の設立60周年記念の展覧会の打ち合わせと、

秋に行われるアートTAIPEIというアートフェアへの参加希望を伝える為の小旅行でした。

所用は2日目の早くに片付いてしまいましたので、いつもお世話になる藤森建築繋がりの台湾の友人に案内してもらい、

今回は台北の南東に位置する宜蘭(ぎらーん)市へシーサイドウォークに温泉、

シーフード堪能という贅沢コースへ連れて行ってもらいました。

 

海岸ではサーファー達が練習していて、沖合いにはタートルアイランドと呼ばれる亀に形が似ている島が浮かんでいます。

波打ち際のテトラポッドには蟹が戯れていてのんびりした感じです。

堤防の下に落ちていた流木を拾って来て鳥形の恐竜のようなオブジェを作りました。

 

 

宜欄海−1            宜欄海−2

 

From the see of Giran-1

 

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