• 歳時記

絵と布の画廊歳時記2018年1月2月合併号

初富士銀冠その蒼身は空へ融け  中村草田男

 

水墨富士新年うぇb

 
児島善三郎 富士山 着色水墨

 

明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
 

昨年の11月、12月号の欠刊、お詫び申し上げます。
暮れの台湾行きやで、何かと手が回らず、失礼いたしました。
 

その台湾國立臺北教育大学北師美術館で開かれていた「日本近代洋画大展」も
この7日で3ヶ月間の会期を無事終了することができました。
入場者数も尻上がりに伸び1万数千人に達したということで、
一時期のポストコロニアリズムの影響も杞憂に終わった様に思えます。
この展覧会の成功で台湾はもとよりアジアの国々での日本の近代洋画の理解が深まり、
コレクションアイテムとしても定着してゆくことを望んでおります。
 

昨今、空前の金余り市場といわれていますのに、
我が国の市場では日本画も洋画も値を下げるばかりで、
一向に回復の兆しが見えません。
人口減少と高齢化の影響に加え若年の貧困層の増大もニュースを賑わし、
住環境の変化もあり、なかなか、国内での絵画の販売が伸びないのが実情の様です。
若手作家や新人を扱われる画廊さんの話を聞いても、
海外のアートフェアに積極的に出店して新しい客層を開拓する以外に
生きる道は見つけられないなどと言っています。
まさに死活をかけた戦いの真っ最中なのです。
 

当然、私どもの様な物故作家を中心に商いをしてきた画商も
生き残りに必死にならなければなりません。
今までは、国内の需要に応えていればよかったのですが、
その需要が蒸発しそうな今、やはり海外に販路を見出してゆかなければなりません。
今回の台湾での展覧会の様に日本美術の優品を積極的に紹介し、その魅力を伝えるのが大事です。
暮れの台湾行きでは三社のオークション会社を訪問し
この春以降に開催されるセールへの参加を打診してきました。
また、博多画傳三傑展のために収集した冨田渓仙の作品の展覧会開催の下話もしてまいりました。
文人画を見ながら、茶館で茶藝を楽しむというコンセプトです。
世界に誇れる日本人画家は北斎や若冲だけでなく、
児島善三郎や梅原龍三郎、藤田嗣治ほか
洋画の世界でもたくさんの画家を挙げることができます。
 

さて、掲載の富士の水墨画ですが、
善三郎の大久保泰紙への昭和19年12月26日付の手紙の中に
「この10日あまり箱根から富士の裾野の方へ回って来ました。
富士宮市近くで40号に、富士と裾野の水田を描いてきましたが、
富士宮の郊外の富士は、裾野を長く引いていて、実に壮麗の極みです。
帰途、吉原の曽宮君に会ってきましたが、
吉原から見る富士の上半身の雪は、また実に見事で、
まるでてっぺんからスダレを下げたような雪の縞が、
私には言語に絶した魅力でした。」とあります。
きっとその折のスケッチをもとに描かれたのではないかと思います。
 

今年は3月に渋谷のアツコバルーでの襤褸展
6月には去年に続き「縄文シャワー展示室展」の開催を予定しております。
ご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

 

新着コーナー

 

棟方志功ほか
 
新春画廊風景 棟方志功版画など

 

 

藤島_新高山
 
藤島武二 「新高山」 クレパス/紙 18x25cm
こちらのページでも作品をご紹介しております

 

 

藤田小鳥_歳時記
 
藤田嗣治 「小鳥を持つ少女」 1948年
鉛筆/紙 41×31.8cm
こちらのページでも作品をご紹介しております

 

 

伏木ラクダ歳時記2
 
伏木庸平 「Unnamed」 2017年 糸・布など
こちらのページでも作品をご紹介しております