児島善三郎「炎天」 10号 1938年 個人蔵
張大千「風景」 ウェブサイトより転用
炎天の色やあく迄深緑 正岡子規
丘の上APTが完成したのは四月下旬ですが、早いもので開廊記念の善三郎展を経て、
現在、昔の労働着のズボンに当たる「タッツケ展」を開催中です。
思えば、正月の工事開始からあっという間の七ヶ月でした。気がつくと梅雨も明け真夏並みの猛暑に包まれておりました。
おかげさまで、開廊以来沢山のご来客 をお迎えする事ができ、
画廊移転の決断になんとか皆様のご理解が得られたのではと喜んでおります。
それにしても、こんなに忙しいのは久しぶりです。
オープ ン展が終わってから、今の展覧会初日までわずか十日ばかりで、
その間に前の片付け、今回の展示用の買い物やタッツケの胴回りの固定の為に竹を割って、炙っ て,曲げてワッパを作ったり、
型枠を作り竹や木の棒を固定しコンクリートを流し込み展示用のスタンドを作ったり大変でした。
〆はオープニング料理作りまで 大汗をかきながら奮闘しました。
あーあ!気持ちよい!!と言っているうちに盆休みになりました。
今回のテーマは「炎天」と青緑色なのですが、それを思いつ いたのは立秋をすぎた頃で、
毎朝の犬の散歩の時にふと気がついた木々の影からでした。
夏至からだいぶ経っているのでお日様の角度も一寸は傾いて来ているの に、
強い日差しを受けた木々の影はまるで野焼きの後のような暗緑色で草叢をえぐるように強いコントラストを落としていました。
炎天をゴッホのように黄やオ レンジの糸杉の葉のようなうねりで表すか、子規の様に深緑の影としてとらえるかはまことに興味深いものがあります。
今回掲載の善三郎の「炎天」は子規と同じ青緑派のように思えます。
しかし、画家がこのような色使いを始めたのは代々木から国分寺へ移る少し前からで す。
ヨーロッパから帰国後の代々木時代には南画的表現を取り入れ東洋的フォービスムと呼ばれるような
新画法を編み出したのですが、大自然の荘厳さを表すに は色彩の問題の解決が立ちはだかっていたようです。
並べて示しましたのは中国の天才画家張大千の絵ですが、
水墨画の中に鮮烈な群青と緑青を取り入れ画面に 強烈なダイナミズムを創出しています。
同じような問題意識を持っていたのではと考えて見るのも楽しい事です。
しかし、昭和15年頃を境に善三郎は青緑を対 比して使う事をしなくなりました。
そんな訳もありこの「炎天」は大好きな作品の一つです。
タッツケ展
丘の上APTオープン記念展「児島善三郎−国分寺時代の田園風景−」
我が母校、第四小学校の子供達も見に来ました!
新着情報
梅原龍三郎「三宝柑」1944年 岩彩/紙本
現在特注額縁製作中です。焼杉の磨き出し木地椽に緑地金更紗を
斜地面に張り込みます。
児島善三郎 「静物」10号 1951年
1959年 銀座松屋「児島善三郎自選展」出品
三年後に東京と台北で開催予定の「龍三郎、善三郎展」の構想を
少しずつあたためています。
11月3日から志村ふくみ先生の着物
コレクション展を開催致します。お楽しみに。