• 歳時記

絵と布の画廊歳時記 2015年1月2月合併号

麦の芽の丘の起伏も美まし国      高浜虚子

 

児島善三郎「麦畑」8号 1949年(昭和24年)

 

児島善三郎「麦畑」8号 1949年(昭和24年)

 

 

新年号のつもりが随分と遅くなってしまいました。
歳時記も四季の号の他に新年という一冊があるくらいですのに、飛ばしてしまったようです。
なんと言うか、忙しいと言うか、

よく考えてみたら歳時記のタイトルのように画商と古裂商を一度にやっているからかとも思います。
それに、今まではさぼっていた展覧会活動も丘の上APTで再開してしまったからかもしれません。
とにかく、もう二月も半ばになってしまいました。

 

 

三月七日からは『ふるさと野川と田園の輝き』展が始まります。
善三郎と造園家本多克己さんが描いた約70年前の国分寺多喜窪の田園風景です。

 

人や家の数がまだ自然と共生できていた頃の美しい田園詩が聞こえてきます。
亡くなられた赤瀬川原平さんが善三郎画集の巻頭に書いて下さった『空気のリアリズム』という文章の中で
「画家は武蔵野の空気そのものを描いていたのだろう・・」と喝破されていますが、
今はその空気も大分違ったものになってしまいました。

昭和30年頃を境に下の押切間の田圃も徐々に埋め立てられ宅地化し、
崖線上部にあった掲載の麦畑の様な畑も消えて行きました。
浄化機能の未整備な下水が一番低いところを流れる野川に汚染のリアリズムとなって集中してしまいました。
今は下水道が完備され水質も改善されましたが本質は代わらないはずです。

 

 

五月にはAPT一周年を記念して藍染め藍縷展・Indigo Borocollageを開催予定です。

一枚の反物を縫い合わせて布団や服を縫製出来ない程貧しかった日本の常民、
端裂を縫い合わせ継ぎ接ぎして作りあげた集合布が肘や肩や踵や大腿骨に削られ出来た穴ぼこをまた古裂で塞いでゆきます。

そこに出現する風景はまことに怪しく美しいのですが、
人が生きる事で、身を守ってくれるはずの自然を壊してゆく姿に似ているようにも思えます。
人類に与えられた時間はそれほど長くはない有限であるのに、
紛争やテロによって崩壊しつつある現在の世界の姿は、虚子の詠む美まし国の対極と言えます。

 

No.962裏(8)調整

 

 

藍染継ぎ接ぎ藍縷の布団地
美術品に関わる税制改正のおしらせ

 

 

美術品の減価償却に関わる税制が本年一月一日をもちまして改正されました。
個人法人を問わず事業者が業務用に供する用途で購入する美術品について
現在までの20万円を大幅にアップして100万円(消費税を含むか含まないかで違いは出ます)まで

8年間で償却できるようになりました。

又、屋外設置彫刻や壁面に固定された壁画などの絵画も環境の変化による毀損等を考慮して償却資産とする事ができるようになりした。

 

ただ、個々の事案に関しましては点数の問題や作品の性質などにより当局の判断によって対応が異なる場合も予想されます。
あらかじめ、顧問税理士にご相談されるか税務署にお問い合わせされる事をおすすめ致します。
事務所やショールームを美しく飾り顧客満足度を高めながら、

節税にも繋がる事ですので私達業者にとっても嬉しい改正です。

 

是非、美術品のご購入をご検討下さい。金額から言って版画や水彩などの優品がお勧めです。

 

新着コーナー

薔薇4号      山口薫 沼と馬

 

児島善三郎 薔薇 4号  1953年  山口薫 パステル 沼と馬 29.0 x 21.5cm  1956年頃

 

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