• 歳時記

絵と布の画廊歳時記2017年7月8月号

岳の影ヨットに卸せし波にあり 岡田貞峰

 

入江

 

児島善三郎 「入江」 榛名湖 1939年頃 10号 油彩/キャンバス 法人蔵

 

今年の夏の天気は不順だらけという感じです。
列島各地に大雨を降らせた梅雨末期の渋滞積乱雲に迷走台風が各地に大きな被害をもたらしました。
この先も台風や竜巻など心配です。
 
今年の夏は「縄文シャワー展示室展」で始まったので、渦巻きにはそうとう接近遭遇致しました。
渦巻きはすべての生命の元になるエネルギーを表していることを
一万年以上前のご先祖たちは解っていたというところが驚きです。
渦巻きが重なり、連なり、潜り込みなどしながら、土器の表面と内側との空間概念を曲げてゆきます。
土器を作る粘土のことを胎土と呼びますが、
縄文土器はよく女神や母親の身体に例えられたりします。
土器の口辺には把手として女性の顔が付けられ、
横腹からは胎児が顔を出している出産を思わせる土器もあります。
まるで、人の身体のように外部は内部とつながり、内部は複雑に入り組みながら再び外部へとつながります。
クラインの壺のようなその概念は生命の循環を意味するとも言われています。
幼くして亡くなった生命は再び母親の胎内に戻り
新たな生命として生まれ変わるとも考えられていたようです。
集落全体を胎内と考えれば村で亡くなった人たちも同じような考えで
再び生まれ変わってくると考えられます。
 
このように、壺一つとっても、その内外に時間軸を置くと
宇宙の生成と変わりなくなってくるように思えます。
年老いた巨星が白色矮星になりやがて収縮を始め、ついにはブラックホールになり、
すべてのものをのみ込み、やがて次元を超えて別の宇宙に再生するなどと考えてみるのも
普段の雑事から解放される夏休みの楽しみに良いかもしれません。
 
掲載の絵は真夏の榛名湖が題材になっています。
山湖に影を落とす山影を縫うようにヨットが静かに進もうとしているように見えます。
すでに大陸では不穏な空気が動き出している昭和14年の夏休みの景色です。
空に浮かぶ丸三角の雲とTシャツを干しているような雲が仙厓和尚の禅画を思わせて愉快です。
この雲が代表作「アルプスへの道」(昭和26年作)の空へと流れてゆきます。

 

秋の展覧会催事のご案内

 

北村さゆり挿画展 -宮部みゆき『三鬼』の世界-
9月1日より30日まで丘の上APTにおいて「北村さゆり挿画展 -宮部みゆき『三鬼』の世界- 」を開催します。
人気小説家宮部みゆきさんが日経新聞朝刊に長期連載した聞き語り大部「三鬼」の世界を
日本画家北村さゆりさんが全話描いた原画をすべて展示いたします。
また、その中から当画廊が厳選した名場面を高精細ジークレー版画に起こして販売もいたします。
画廊ホームページをご参照下さい。会場およびwebにてご注文承ります。詳しくはこちらをクリック>>>「北村さゆり挿画展」

 

日本近代洋画の醸成と発展
10月6日より台北市台北教育大学北師美術館で「日本近代洋画の醸成と発展」展が2018年1月6日まで開催されます。
児島善三郎、梅原龍三郎、藤田嗣治などを中心に近代洋画の名品約90点の作品を戦後初めての試みとして展示いたします。
主催は東京芸術大学、国際交流基金、日本洋画商協同組合の三者と北師美術館。
兒嶋が企画当初から実現に向け各方面と協力して頑張った展覧会です。機会がありましたら是非台北までお出かけください。

 

児島善三郎展
11月4日土曜日から12月17日日曜日まで(月曜休)小金井市立はけの森美術館にて「児島善三郎展」が行われます。
国分寺風景を中心に約50点が展示されます。
同館のコレクションの中心となる中村研一画伯とはともに福岡出身で中学修猷館時代よりの同窓で、
若き日の欧州留学時代以降も交流が続きました。

 

 

新着コーナー

 

善三郎_静物_歳時記
児島善三郎 静物 10号 1958年

 

 
歳時記_薔薇
児島善三郎 薔薇4号 1954年

 

 
三木富雄 EarY3-1972歳時記
三木富雄 EarY3 1972年

 

 

梅原龍三郎_菊野女史
梅原龍三郎 菊野女史 木炭/紙 10号大

 

 

蒼風富士
勅使河原蒼風 冨士 4号 油彩/金色紙