• 歳時記

絵と布の画廊歳時記2017年9月10月号

澄むものの限り尽くせり秋の水  乙 二

 

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児島善三郎 「函根の晩秋」 1946年頃 10号 油彩/キャンバス

 

 

空気もキーンと引き締まり山の湖にも晩秋の色が濃い。ここも画家の定点観測の場所の一つです。
初めて辿れるのが1937年に描かれた「晩秋の蘆湖」という題の同じく10号で、翌年にも「芦ノ湖晩秋」が描かれています。
また、その翌年の1939年にも「芦ノ湖晩秋」と続きます。1941年には「蘆之湖初夏」、1942年には同じく初夏に3点、
掲載の絵が1946年、1951年に5点と同じ10号のFサイズでほぼ同じ場所、若しくは近い場所にイーゼルを立てています。
画面構成はよく似ていますが一作一作工夫を凝らし、手前の箱根神社あたりから恩賜公園の半島をかすめて対岸を描きます。
ちょうど、その距離感が良いのと、ゴルフの弾道の反対曲線のような視点の移動が面白かったのでしょう。
国分寺でも同じような練習をしているのですが、そのスケールが全く違います。
手造りの代々木の自宅の庭の距離感から国分寺の野川を挟む浅いU字谷の空間へ、
そして、この箱根の大きなボウルの底のような空間へと善三郎の実験は続きます。
直線的遠近法ではなく弛ませた張綱の上を歩いて渡る様な空間の把握、
中間の空間のリアリティーを描く鍛錬が風景画はもとより後年の瓶花の作品の中での
ツボと花の距離や薔薇の花びら同士の距離などミクロの空間表現にも大きな力を発揮することになります。

 

 

台北北師美術館 近代日本洋画大展

 

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児島善三郎 「赤い背景」 60号 1929年

 

5年ほど前から構想を練り準備を始めていた祖父の絵をふくめた
日本近代洋画の台湾での展覧会がいよいよ実現の運びと成りました。
この10月6日が招待日で7日から一般公開も始まりました。
この展覧会のそもそもの始まりは、善三郎の単独展の企画から始まりましたが、
次に梅原・児島の2人展、またそれが拡大して東京藝大、日本洋画商協同組合の記念事業と合体して
明治から戦前の昭和期の洋画家・水彩画家合わせて31作家の作品約90点の大展覧会と成りました。
戦前戦後を通して、東アジアで初めての本格的日本近代洋画展の展覧会です。
上に挙げた「赤い背景」は第一回独立美術協会展の出品作で
1931年に台湾に巡回展示されて以来86年ぶりの展示として大きな話題となっています。
展覧会後、台湾に置いてゆくつもりはないかとの打診もありました。
名誉なことでもあり、日台美術交流の発展に役立てるのであれば前向きに考えて行きたいと思っております。
展覧会に合わせて立派な図録もできました。
英文中文もあり、日本の洋画の今後の世界的理解の橋頭堡になって行ってくれると確信しております。
大学美術館側の話ですと、入場者数を十万人と見積もっているとのことですので、大いに期待しているところです。
会期は2018年1月7日まで。また、12月に再度訪れる予定にしております。

 

 

 

児島善三郎展

 

小金井市立はけの森美術館で開催される「武蔵野の四季と共生・児島善三郎の国分寺時代」展と
同時開催「アールデコのParisに酔う・児島善三郎の美女図鑑」展が11月4日から丘の上APT兒嶋画廊で始まります。
小金井の美術館では国分寺時代の田園風景を、丘の上APT兒嶋画廊では滞欧時代の女性像を中心に展示されます。
どちらも12月17日まで。会期中、国分寺から小金井の美術館まで野川沿いに歩くウオークツアーも実施されます。
詳しくはそれぞれの案内をご参照ください。

 

 

Basic RGB   秋晴

 

 

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