雲の峰石伐る斧の光かな 泉 鏡花
名作「アルプスへの道」の翌年に描かれた同じく30号の作品です。
取材した場所は同じ有明山を捉えた構図で、2年前の「夏山」から続く挑戦です。
夏山は天気が良いほど白く霞み絵にはなりにくいものだと思いますが、
様々な雲が通り過ぎる一瞬に山嶺を浮かび上がらせる瞬間があるのでしょう。
「夏山」や「アルプスへの道」の時には、その刹那を夢色の雲のカクテルが中宮寺の「天寿国曼荼羅繡帳」のように
五彩に輝く雲の峰として配しました。
どちらも代表作の一つとして記憶されるものになりました。
今回取り上げた「高原」にはそんな晴れやかさは見えません。画面全体もおつゆ描きでさっぱりとしています。
十年ほど前のオークションに出品された折に久しぶりに実見しましたが、最初はやはり頼りない感じを受けました。
しかし、見ているうちにムズムズしてくるような興奮が襲ってきました。
前二作では宙に浮かぶ雲は山嶺と一体となり虹彩として輝く装飾的な要素としての役割を強く負わされていたように思いますが、
この「高原」においては山嶺と空、そこに浮かぶ雲とは別次元のものとして独立して描かれているように思えました。
それぞれが引き立て役に甘んじるのではなく、
別々の存在として画面の中に己の存在場所を獲得することが可能になったのです。
主体と客体との関係が解き離れたと行ったと言っていいのでしょうか。
静物画で言えば花と壺とバックと手前の敷物が同時に存在を主張しあいながら
絶妙な調和を醸し出すといったところでしょうか。
これが、善三郎の念願した写実の境地の実現となったのでしょうか。
鏡花の句もそのような視点で味わうとぞっとするような凄みが出てきます。
<縄文シャワー展示室展>
6月29日からはじまりました縄文シャワー展示室展には、
連日の酷暑の中、多数ご来場頂き皆様大変熱心に鑑賞してくださっています。
昨年の第一回に引き続き、子供達を中心に粘土細工も楽しんで頂いています。
8月10日(金)までの開催です。皆様のご来場をお待ちしております。
※終了後も展示はしばらく残す予定です。会期中ご都合の悪い方はどうぞお問い合わせ下さい。
(国分寺市教育委員会蔵の土器土偶は会期中のみご覧頂けます)
<赤瀬川原平未発表コラージュ展>
赤瀬川先生が亡くなられてから四年目に当たります本年10月24日(水)より「赤瀬川原平・未発表コラージュ展」を開催いたします。
未発表のコラージュ作品19点とともに模型千円札、零円札、他の赤瀬川原平作品も展示致します。
詳しくは後日ホームページなどでご案内いたします。
新着作品
長谷川利行「火の見櫓のある風景」
27.1×40.6 cm グァッシュ/紙ボード
昭和47年発行講談社刊「長谷川利行画集」No.66所載
(この作品についてのお問い合わせは>>>こちら)
児島善三郎「薔薇」 39.5×30.5 cm 帯地額装 インド茜地金更紗使用
(この作品についてのお問い合わせは>>>こちら)
籔内佐斗司「威勢海老」 1988年
72x36x30 cm 木彫、漆、共箱
(この作品についてのお問い合わせは>>>こちら)
福井良之助 「風景・海(2)」1960年頃
33.0 x 15.5cm 孔版
(この作品についてのお問い合わせは>>>こちら)