• 歳時記

絵と布の画廊歳時記 2016年3月4月合併号

春雨のかくまで暗くなるものか 高浜虚子

 

春雨の熱海 歳時記

児島善三郎 「春雨の熱海」 1951年 10号 個人蔵

 
丁度此の時期は、南から暖かな空気が入ってきて、
まだ上空に居座る寒気とぶつかり、荒れ模様の天気になることが多いようです。
桜花を散らす雨が、新しい緑の芽吹きの慈雨となり、
気温も空の色も日によって随分と異なり体調の維持にも気を使います。

 

本年は年明けから展覧会が二本続き、さらに7月には銀座洋協ホールで、
11月には福岡アジア美術館での展覧会が控えています。
7月に行うのは福井良之助先生の没後30年を記念する回顧展です。
多くの方々のご協力を得て開催することになりますが、
こういう機会に代表作といって良い作品により多く触れていただき、
作品の評価を高められればと願っています。
これはという作品をご所蔵されている方は是非お申し出でください。
11月の博多三傑展も会場と会期が決まり気合が入ってまいりました。
現在国分寺の画廊に渓仙8点と善三郎の水墨画8点を並べ前哨戦となる鑑賞会を行っております。

 

掲載の絵と句はよくもまあといった具合に呼応しています。
熱海の桜は毎年のように写生に出かけていたようですが、
此の時は冒頭に書いたようなお天気に当たってしまったようです。
宿屋で待機するのももどかしく、外に出て描き始めたのでしょうか。
伊豆山の高いところから初島を右に見て描いていますが、
空は真っ黒ですし水平線がわずかに青いくらいで画面全体が雨に煙っています。
その中に桜の花だけが仄白く浮かび上がっています。
明るい桜も良いですが、墨染の地に描かれた友禅のような渋さがなんとも言えません。
これも日本人の持つ大切な風情と情緒です。
雨を厭わず飛び出したお二人に脱帽といったところです。

 

新着コーナー

梅原龍三郎「金櫻山」 1936年 15号 同年国画会展出品

名称未設定

梅原の青の時代とも呼ばれる作品群の一つです。
沼津近郊の江ノ浦あたりの漁村から見た暁風景。
同じような色調は1935年の桜島や霧島風景などにも見られます。

 

児島善三郎「池畔」1946年頃 サムホール

歳時記池畔

郷里福岡の大楠を描いた小品ながらスケールの大きな作品です。
太宰府の大楠も何枚か描いていますが、どこの池の端かは不明です。
九州では筑後地方を中心に、樟脳をとるための楠や蝋をとるための櫨が藩の殖産政策のために多く植えられました。
楠は大木に成長するため信仰の対象にもなっています。

 

南仏風景 1926年頃 6号

名称未設定

 

継接ぎボロ野良着
No.1221_1

 

 

丘の上APT情報

「丘の上APT 2016春の特別鑑賞会」開催中です。詳細はこちら
11月に福岡アジア美術館にて開催する「博多三傑展」に先駆け、
富田渓仙と児島善三郎の日本画を中心に、また村上華岳の達磨像、
鏑木清方の美人画など展示しております。

期間:2016年4月5日〜5月22日
12:00〜18:00(月祝休)
場所:丘の上APT/兒嶋画廊

 

お知らせ
福井良之助没後30年記念回顧展「静謐なる時のレアリテ」
会期:2016年7月5日(火)〜9日(土)11:00〜18:00
会場:銀座洋協ホール
中央区銀座6丁目3−2 ギャラリーセンタービル 6F
03-3571-3402
主催:福井良之助没後30年記念展実行委員会
企画:兒嶋画廊

 

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